イスラムの女性を守る「ヴェール」を学ぼう

世界の宗教

イスラム教の女性たちの多くが外出時に着用しているヴェールやスカーフ。日本でも見かける機会が増えてきましたが、ヴェールにどういう意味が込められているかご存じでしょうか? 今回はヴェールについて理解を深めていきましょう。

イスラム女性の尊厳を守るヴェール

イスラム教は厳しい戒律を課すことによって、高潔な社会を目指しています。ヴェール着用もその一環で、夫婦ではない男女間において淫らな欲望などが生まれることを防ぐために、慎しみ深い服装を着用するようにとコーラン(イスラム教の教典)で記されています。その教えを信じるイスラムの女性たちは、外出時に女性の美しい身体的な特徴を隠すために、髪や身体を覆う、ゆったりとしたヴェールを着用しているのです。

暑いときでも肌の露出を控えなければいけないため、私たち日本人には一見、不便に見えるかもしれませんが、コーランの教えの通りに正しい服装をすることで、父親や夫以外の男性からの不当な接触が起こらず、女性の清い心や尊厳が守られるという考えが背景にあるのです。
最近は日本だけでなく世界的にセクハラ問題がたびたび報道されますが、ヴェールを着ることによって性の対象として見られなくなるため、セクハラ被害が減り、女性としての尊厳が守られるという主張もあるほどです。

ちなみにイスラムの女性たちも、家の中ではヴェールを脱ぎ、日本人と同じようにTシャツなど自由な格好をしています。

女性の解放というのは本当?

ヴェールはイスラム教における女性抑圧や差別の象徴として捉えられることもありますが、実際はそうではないことは、ここまでの説明でご理解いただけたと思います。確かにサウジアラビアのような一部の国ではイスラム女性の服装を厳しく法律で定めていますが、コーランでは決して強制しているわけではありません。世界中の多くのイスラムの女性たちは、信仰行為の一つとして、自らの選択においてヴェールを着用しているのです。

近年、欧米諸国では、イスラム教における女性への抑圧からの解放という大義名分のもと、スカーフや全身をすっぽり覆うヴェールの着用を法律で禁止する動きが起こり大ニュースとなりましたが、必ずしも“女性の解放”につながるとは言えないのかもしれません。

様々な種類があるヴェール。近年はファッション性も

社会的・文化的背景、またコーランの解釈の違いにより、様々なスタイルのヴェールが存在します。代表的な3種類をご紹介しましょう。

ヒジャブ

スカーフのような布で頭髪を覆うが、顔は露出するスタイル。もっとも一般的なヴェールだが、国や地域によって巻き方が異なる。

ニカブ

全身をすっぽり覆い尽くして、目だけを露出するスタイル。

ブルカ

ニカブの一種で、目の部分まで網目状になっており、全身を完全に多い隠すスタイル。アフガニスタンで使われている。

また近年はヴェールにもファッション性が加わり、特にヒジャブはカラフルなデザインのものも多く出回っているようです。私たちが毎日洋服を楽しむように、イスラムの女性たちも自分なりのスタイルでヴェールを着こなすようになっているのです。

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