これだけは知っておきたい世界の宗教シリーズ① 世界にはどんな宗教がある?

“日本人は無宗教”と称されることが多いことからも分かるように(実際はそうでもないのですが)、多くの日本人は宗教に対する理解が足りない面があります。
しかし世界では9割近い人々は何かしらの信仰を持ち、日々の生活や考え方に大きな影響を与えています。訪日外国人のみなさんがどのような宗教を信じ、どのような考え方を持って生活しているのかを理解することは、迎え入れる立場の私たちにとっても大切なことではないでしょうか。
また宗教は世界の様々な事象とも密接に関わっており、社会情勢やその背景を理解する上でも、宗教の知識は不可欠です。
この世界の宗教シリーズでは、世界の主な宗教に関する最低限知っておきたい知識を整理してお伝えしていきます。
そもそも宗教ってなに?
日本では新興宗教の存在感が比較的大きく(世界的に見ても新宗教の数が多いのは事実)、また、ごく一部の過激派が世界各地で引き起こす様々な事件が大きく報道されることから、“宗教”という言葉から距離を置きたい、できるだけ関わらずに生きてきた、という読者の方も少なくないでしょう。
しかし宗教は決して怪しいものではなく、人々が自分自身の存在を見つめると同時に、より良く生きるため、もしくはより良い来世を迎えるために、心の拠りどころとしているものです。神や仏、あるいは霊などを信仰の対象とし、その偉大な存在に近づくために、祈ったり、戒律を守ったりしているのです。教えの内容が非科学的であるかは問題ではありません。
皆さんが神社などにお参りし、神様に感謝やお願い事をするのと根底は同じです。
またもうひとつ知っておきたいのが、同じ宗教の信者であっても、信仰心の深さや考え方は個人個人で異なる、ということです。教徒は決して画一的ではなく、個人がそれぞれの解釈を持ち、それぞれに信じるものを信じて日々生活しています。
世界の人々が信仰する宗教
2016年時の統計によると、世界人口は約74億人。そのうち、およそ9割にあたる65.7億人もの人が何らかの信仰を持っていることが分かっています。日本人の感覚とは異なり、世界では何かしらの宗教を信仰していることが当たり前といっても過言ではないのです。
世界でもっとも信仰者の数が多いのはキリスト教で、世界の230以上の国にまたがり約24.5億人に信仰されています。次に、イスラム教(17.5億人/200カ国)、ヒンドゥー教(10億人/140カ国)、仏教(5億人/150カ国)と続きます。
▼ 世界の宗教人口の構成割合
世界宗教と民族宗教
世界には、正確には把握するのが難しいほど大小多数の宗教や教派が存在しています。そのうち、キリスト教、イスラム教、仏教は、人種や民族、国家を超えて世界中で信仰されていることから「世界宗教」と呼ばれます。これらは教典が整っており、開祖が明確であることも特徴です。
これに対し、各地の民族の中でのみ信仰され、その民族の風習や生活に深く関わっている宗教を「民族宗教」と呼びます。日本の神道、インドを中心とするヒンドゥー教、ユダヤ人によるユダヤ教、中国の道教などがこれにあたります。民族宗教は世界宗教のように民族間を越えて広まることはありませんが、キリスト教がユダヤ教を母体に、仏教がヒンドゥー教を母体に生まれたように、民族宗教のなかから世界宗教が派生してきたという歴史があります。
なお、世界宗教とよく混同される言葉として「世界三大宗教」という言い方を見かけます。これはキリスト教・イスラム教・仏教の3つを指すものですが、これは日本や中国等だけで通用する概念です。信徒数だけでみれば、上でご紹介したように、キリスト教・イスラム教・ヒンドゥー教がトップ3に並びます。海外では世界三大宗教といっても理解されないということも知っておきましょう。
本シリーズでは続いて、主要宗教についてご紹介していきます。