「養子大国」の日米を比較!実はまったく異なる養子縁組事情とは

ハリウッドスターが養子を迎えたというニュースを時々見かけるように、米国では養子縁組が積極的に行われています。なぜ米国では養子縁組が活発なのか、日本ではなぜ普及しないのか、その背景を探ってみましょう。
実は日米ともに「養子大国」
1年間に成立する養子縁組の数は、米国が約12万件、日本は約8万件で、実は両国とも世界有数の養子大国と言われています。しかしその内訳は大きく異なります。
上のグラフは2012年の日米の養子縁組の構成比率を比較したものです。
“養子”と聞くと“子ども”というイメージが強いと思いますが、日本で行われている養子縁組の実に67%が「成年養子」。つまり、婿養子のように成人を家族に迎え入れるケースが大半なのです。これに対して、まったく関係のない子どもを引き受ける「他児養子」はわずか1%ほどです。
一方、米国ではこの「他児養子」が50%を占めており、成年養子は0%。
このように、日米はともに養子大国でありながら、その実態は大きく違うのです。この差はどこから生まれてくるのでしょうか?
“売り手市場”と揶揄されるほど盛んな米国
米国における他児養子は主に、国内で生まれた婚外子を対象とする養子、公的機関に保護された児童を養子にする「里親養子」、海外で施設に保護されている児童を養子とする「国際養子」という3つに分類されます。
いずれにしろ、「すべての子どもは家庭的環境で養育を受ける権利がある」という理念のもと、子どもに恵まれなかった夫婦や、不遇な境遇の子どもたちを救いたいと考える多くの夫婦たちが、他児養子縁組を希望しているのです。養子縁組をサポートするNPOや、政府と民間が運営する団体などの活動も盛んに行われています。
その根底として、米国では昔からキリスト教の教会が中心となって恵まれない子どもたちを保護してきたという宗教的背景もありそうです。昨今は、対象となる子どもの数よりも養子縁組を希望する夫婦の数が多すぎて、必ずしも養子を取れるわけではないほどの状況のようです。
「家」のための養子縁組が中心の日本
一方、冒頭でご紹介した通り、日本における養子縁組は、「成年養子」が過半数を占めています。これは、日本における養子縁組は、米国のような子どもの保護ではなく「家系の存続」を主目的に行われてきたことを意味します。
昨今は、実親から虐待を受ける子どもの数が年々増加しています。また格差の拡大を背景とした貧困を理由として施設に保護される子どもたちもいます。その数は平成28年時点でおよそ4万6000人にのぼります。
その一方で、不妊治療に取り組む夫婦の数も増加していると見られています。新しい家族を必要とする子どもたちも、子どもを希望する夫婦も、共に増えているにも関わらず、養子縁組が進まない理由はどこにあるのでしょうか?
様々な理由が考えられますが、歴史的に「家制度」が重視されてきた中で、養子や里親という制度がほとんど認知されず、また事例も少ないため関心があっても踏み切れない、といった背景が推測されます。
厚生労働省は養子縁組を推進する考えを示しており、里親や養子縁組の成立件数を2倍に増やす目標を掲げています。今後、日本の養子縁組事情は少し様相を変えていくかもしれません。